江戸時代、御用職人だった濱野清太郎は、何枚もの革を漆で塗り固めた刀の鍔（つば）を作製。鉄よりも軽く堅く、武士たちに珍重されました。その優れた皮革工芸の技術を受け継ぎ、甥の伝吉が1880年（明治13年）に創業した濱野伝吉商店が「HAMANO（ハマノ）」の始まりです。大正期に店を継いだ2代目の初男は和装から洋装への変化をいち早く感じ取り、婦人ベルトやバッグの作製を開始。革の入手が難しかった戦争前には、根竹を用いた画期的なクラッチバッグを生み出しました。早くから海外に目を向けていた初男は1950年代に渡欧。有名工房を視察し、最先端のセンスと技術を持ち帰りました。その経験をもとに、横長フォルムが斬新で優雅なロイヤルモデルを考案し、日本のプレステージブランドとしての名声を確立したのです。昭和初期から欧米のファッション誌や商品を取り寄せ、バッグを徹底研究してきた初男のグローバルな視野は3代目の敬之の代でいっそう広がり、1965年には「フレンチ ヴォーグ」への広告の出稿を通じて「HAMANO」が世界基準のブランドであることを発信しました。 1950年代からは、日本を訪れた国賓や世界的名士への贈り物として指名され、1980年には故ダイアナ妃にも古代エジプトのモチーフをあしらったクラッチバッグを献上。「HAMANO」は名実ともに日本が世界に誇るトップブランドへと成長し現在もさらなる進化を遂げています。